自宅サロン開業時に使える助成金を紹介!利用する際の注意点とは?
2024年4月16日
自宅のスペースを使ってサロン経営をする自宅サロンは、コロナ禍で需要を増しており、メリットも多いことから人気を集めています。個人で開業することができ、広いスペースを必要としない自宅サロンは開業のハードルも低めです。
しかし、数年足らずで閉店してしまうサロンが非常に多く、経営を続けていくことは簡単ではありません。そんな自宅サロン開業の資金面の負担を減らすのにおすすめなのが、助成金や補助金の利用です。この記事では、サロン開業に役立つ制度の内容や申請方法について解説します。自宅サロンの開業を検討している方はぜひご覧ください。
目次
自宅サロン開業で使える助成金
自宅でサロンを開業する場合、利用できる助成金や補助金の制度があります。助成金と補助金は似ていますが、その内容は違います。
助成金は事業者の自己負担にかかわらず国や自治体が一定額を支給する制度であるのに対し、補助金は事業者の自己負担が前提となっています。助成金は条件を満たしていれば受給できることが多く、使用後の報告も必要ありません。
補助金は助成金と比べて審査が厳しく、必ず受給できるとは限りません。受給後は実績報告が義務付けられています。
助成金と補助金はどちらも返済の必要がないものが多く、なにかとお金のかかる開業費用の負担を軽減できる制度です。申請には条件や審査、期限など細かい決まりが定められていることがあるので、自分が利用できる制度はどれなのかをチェックしてみてください。申請から実際にお金を受け取るまでには時間がかかりますので、間に合わないということがないように事前によく確認しましょう。
なお、助成金と補助金は必ずしも明確に使い分けられているわけではありません。どちらも同じような意味で用いられていることもあるので、利用するときはその内容をよく確かめる必要があります。
助成金の種類と対象条件
サロンの自宅開業で利用できる助成金・補助金の種類としては以下が挙げられます。
- 事業再構築助成金
- 販路拡大助成金
- 小規模事業者持続化補助金
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 地域雇用開発助成金
- 両立支援等助成金(出生時両立支援助成金)
- 自治体独自の助成金
事業再構築助成金
事業再構築助成金は、コロナ禍後の経済社会の変化に対応するため、中小企業の事業再構築を支援し、日本の経済の構造転換を促すことを目的としています。新分野の展開や事業転換、事業再編などに挑戦する中小企業や個人事業主を支えるための助成金です。
事業再構築指針に沿った事業計画を作成して支援機関の確認を受けること、補助事業終了後3~5年の間に付加価値額を向上させることが申請要件になります。その他、申請枠によって申請条件が細く設定されています。
販路拡大助成金
販路拡大支援事業助成金は、中小企業者がホームページ・企業紹介動画作成など、販路の拡大を目的とした事業を行うために必要な経費の一部を助成する制度です。各自治体によって詳細は異なり、助成金ではなく補助金というケースもあります。詳しくはお住まいの市区町村の情報をご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営計画を作成した上で行う取り組みを支援するための制度です。商工会議所の管轄地域の小規模事業者が対象になります。販路開拓に必要な経費の一部が補助される制度で、申請する枠によって補助の上限額が変わります。通常枠で補助率2/3、補助上限50万円、賃金引上げ枠や創業枠で補助率2/3、補助上限200万円です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、店舗スタッフを非正規雇用から正規雇用にするなど、待遇を改善するときに申請できる制度です。正社員化支援と処遇改善支援のどちらかが受給条件となり、処遇改善支援には賃金規定等改定コースや賞与・退職金制度導入コースなどがあります。各コース前日までに「キャリアアップ計画」などを作成し提出する必要があります。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、人材育成や教育などに力を入れている事業主に助成金が支給される制度です。スタッフの技術向上、資格取得のための休暇制度・短時間労働制度などを設定すると助成金を申請できます。
申請できるコースは4つあり、「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」に分かれています。
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金は、地域の雇用拡大を目的として作られた助成金制度で、指定地域でサロンを開業すると助成金を申請できます。雇用機会が特に不足している地域(同意雇用開発促進地域・過疎等雇用改善地域)で事業を行い、その地域に住んでいる人を雇うことなどが受給要件です。対象労働者の増加人数と設備費用に応じて受給額が決まり、設備費用300万円以上・対象労働者の増加人数3(2)~4人の場合で受給額50万円です。
両立支援等助成金(出生時両立支援助成金)
両立支援等助成金は、育児や介護と仕事の両立しやすい環境のために設置された助成金制度です。スタッフが育児や介護のための休暇を取りやすくするための環境を整えることで受給資格が得られます。
令和6年1月から「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。さらに、令和6年度からは男性労働者の育児休業取得・育児休業取得率の上昇などについて制度が拡充されます。
自治体独自の助成金
自治体によって独自に助成金・補助金制度を設けていることがあります。受給要件を満たせそうな制度がないか、自治体の制度をチェックしてみましょう。
助成金の申請方法
助成金や補助金の申請方法は制度ごとに違いがありますが、主な流れとしては以下のとおりです。
- 申請のための条件を満たす・規定の取り組みを実施
- 申請書類を作成し、期限までに申請
- 助成金交付決定・助成額確定
- 助成金の振込
制度によって、先に申請してから事業を実施するというパターンもあります。特に補助金は、事業者の負担の一部を後から支給するものであるため、補助金申請を事前に行う必要があります。申請時期を間違えると助成金や補助金を受け取れなくなる可能性もありますので、申請の流れを確認して早めに手続きしましょう。
自宅サロン開業の手順
自宅サロンを開業するためには、まず入念な準備や計画が必要です。どこにいつ開業するか、どんな目標を掲げるかなどから始まり、必要な契約や手続き、設備や備品の調達、集客や営業活動などやるべきことは多岐にわたります。予想以上に時間や手間がかかることもありますので、開業手順の全貌を掴んでおくことが大切です。
開業手順の大まかな流れとしては以下のとおりです。
- 事業計画書の作成
- 必要な認可の取得
- 開業資金の準備
- 設備の準備
- 集客活動や宣伝
事業計画書の作成
事業計画書とは、開業の目的や動機・必要資金の調達方法、事業のビジョンなどを記しておく計画書です。融資を受ける際などに必要となる書類で、どんな会社であるかを分かりやすく示すことができます。事業計画書の内容としては次のような項目を記載します。
- 基本情報 代表者名や所在地、屋号、設立年月日などの企業情報
- 創業動機・目的 サロンを開業しようと思ったきっかけや経緯
- 職歴 最終学歴から現在までの職歴、取得した資格
- 取扱商品・サービス サービスや商品の内容、ターゲット顧客の設定、サービス提供方法
- 販売計画 今後の目標売上高、顧客人数
- 店舗計画 出店エリア、店舗のアクセスや立地、面積
- 従業員 各ポジションとその人数、給与・報酬
- 取引関係 販売先と仕入先
- 借入状況 現在の借入残高、年間返済額
- 必要な資金と調達方法 設備資金、運転資金、資金の出どころ
自宅サロンを始めようと思った動機から、どのような方法で経営をしていくのか、どんな強みがあるのか、目指す売上はどの程度かなどを詳しく書き記します。わかりやすく、具体的に記述することが大切です。1年目、2年目、3年目でどのように事業を拡大していくことを想定しているかが伝わるように書くと良いでしょう。
また、取引先や資金調達などお金に関する項目は重要な項目です。「経営を軌道に乗せる見込みがあるか」、「借入額は妥当な金額か」といった部分は融資を受けられるかどうかに直結してきます。
融資を受けるためにはできるだけ早く黒字にすることが望ましいですが、実現不可能なプランや理想の経営イメージを書いても意味がありません。目標売上を達成できる根拠を提示し、説得力のある計画書を作成するよう努めましょう。
必要な認可の取得
自宅サロンを開業するためには、事業用で使用できる物件を探し契約する必要があります。一般的なアパートや賃貸マンションは居住用として貸し出されていることも多く、無許可で店舗として使用すると契約違反になる可能性があります。賃貸の部屋で開業を考えている場合は、必ず事業用で契約できる物件を探しましょう。
自宅サロンの開業に必要な届け出は「開業届」と「サロン名義の銀行口座」です。エステやリラクゼーションサロンの場合、その他の申請は特に必要ありません。マツエクサロンやマッサージの場合は保健所への登録が必要です。エステサロンの開業に資格は必要ありませんが、エステティシャンの資格があることで新規のお客さんに安心感を与え、集客の確率を上げることができます。
開業資金の準備
自宅サロンの開業にあたっては、事業用物件の契約や機材購入などでお金がかかります。資金の調達方法は自分の貯蓄でまかなったり、家族などに協力してもらったりといった方法が多いです。
自宅サロンの場合、サロンの種類によりますが、特別な機材や内装工事をしなければ40万円ほどで開業できると言われています。開業資金の内訳については「自宅サロン開業に必要な資金」で詳しく解説します。
設備の準備
サロンに必要な設備や機材を購入する必要があります。エステサロンであれば施術用ベッド、エステ機器、エアコンやソファなどを準備することになるでしょう。保管用の棚や空気清浄機などもあると便利です。この他にタオルなどの備品、インテリアのための小物や観葉植物なども準備します。
集客活動や宣伝
ホームページの作成やインターネット広告、フリーペーパーへの掲載などで認知度を高めます。最近ではLINEやInstagramといったSNSでアカウントを作り、お店の情報を発信したりネット予約ができるようにするお店も増えています。
自宅サロン開業に必要な資金
自宅サロン開業に必要な資金は、大きく分けて2種類あります。サロンを開業する部屋を借りる・設備や備品をそろえる・公式ホームページの立ち上げなど開業準備にかかる「初期投資」、消耗品の購入や機械のメンテナンス・家賃など運営していく上でコンスタントに必要になる「運転資金」です。
初期投資と運転資金
初期投資は開業時にまとまって必要なお金です。賃貸物件の契約費用、家具・家電や機材の購入費用などがこれに該当します。物件契約には敷金や礼金、その他事務手数料などが発生します。サロンらしい内装にするためにリフォームすると、さらに費用がかかります。
<初期費用>
- 物件契約費用:30万円
- ベッド:5~10万円
- エアコンなど電化製品:20万円
- ソファ・テーブル:10万円
- エステ機材:10万~
- リフォーム費用:10~30万円
- 消耗品費:10万円~
- 広告宣伝費:30万円
<運転資金>
- 消耗品費:5万円
- 家賃:10万円
費用削減のポイント
前項で挙げた費用を抑えるには、いくつかポイントがあります。
- 物件費用を抑える
- レンタル品や中古品を使う
- DIYをする
物件費用を抑える
1つは物件費用を抑えることです。自宅が持ち家や事業用物件であれば物件にかかる費用は大幅に減らせます。居住用物件の場合や自宅で営業するスペースがない場合、あるいは立地の問題でもっとエステ経営に適した場所に開業したいというときには、新たに部屋を借りることになります。
家賃は毎月の固定費の中でも大きな割合を占めるものです。アクセスの良さや築年数など譲れない条件を絞り、それ以外はある程度妥協して家賃を安く抑えることを意識しましょう。
また、家賃が安くても物件契約には様々な手数料や雑費がかかって、予想以上に高くなることもあります。敷金・礼金やクリーニング代、仲介手数料なども含めて比較検討することをおすすめします。
レンタル品や中古品を使う
2つ目はレンタル品や中古品を活用することです。エステ機材や什器は新品で揃えるとかなり高額になってしまいます。レンタル品や中古品をうまく利用することで、初期費用を削減できます。大事なポイントにお金をかけることは必要ですが、全てを新品や最高グレードでそろえると、費用はどこまでも膨れ上がります。
優先順位を決め、削れる部分は削りましょう。中古品やレンタル品は使用期限や安全性について確認した上で使用します。
DIYをする
3つ目は自分でできることは業者に頼まず自分でおこなうことです。部屋のリフォームなど、自分でDIYすることで低予算に抑えることができます。
例えば、賃貸でも使える壁紙シートやフロアシートがホームセンターや通販で販売されています。サロン内のテーマカラーを決め、それに合った色や柄を選んで貼っていけば、室内の雰囲気を一変させることが可能です。本格的なDIYをすればカウンターなどを安く作ることもできます。
広告宣伝費も、チラシを自作するなどの工夫をすれば初期費用を下げられます。手間はかかりますが、できる範囲で費用を抑えましょう。
資金調達方法
自宅サロン開業にかかる資金の調達方法は主に次の4つがあります。
- 自己資金
- 家族や親族からの支援・援助
- 金融機関から借り入れ
- 助成金・補助金
自宅サロンは比較的安価に始められる事業ですが、都市部など家賃の高いところで部屋を借りたり電化製品や機材を購入したりすると、初期費用だけでも100万円は超えてしまいます。金融機関からの借り入れという手もありますが、まずは返済の必要がない国の助成金や補助金の利用がおすすめです。
開業資金については、下記のページで詳しく解説しているので、参考にしてください。
参考ページ:「エステサロン開業、資金が心配?完全ガイドであなたのお悩みを解決!」
自宅サロン開業で助成金を使用する際の注意点
自宅サロン開業の心強い味方となってくれる助成金制度ですが、利用には注意点もあります。違反すると重い罪に問われますので、うっかりミスで不正な申請をしていたということがないよう十分注意してください。
助成金の適正な使用
助成金は国や自治体の定めた目的のために支給されるものです。受給資格を満たし、使用する助成金の目的に沿って利用しなければなりません。受け取ったお金を私的利用したり、他人に渡したりするのは違反行為となります。定められた条件を守り、適正に使用しましょう。
助成金使用後の報告義務
補助金を受給したら、そのお金をどのように使い、その結果事業がどう発展したのかを報告する義務があります。補助事業完了日を含めて30日以内に報告書を提出してください。実績報告書のほか、証拠書類や支出内訳表などをあわせて提出します。
助成金の取り消しや返還条件
助成金や補助金制度の利用にあたっては、以下の行為が禁止されています。
- 助成金・補助金を不正に申請・取得した
- 虚偽の情報で助成金・補助金を申請した
- 助成金・補助金を他の用途に使用した
- 内容の変更や期間延長の報告をしなかった
- 受給後の事業報告をしなかった
- 財産処分の制限に反した
違反した場合は、その内容に応じて罰則が科されます。
- 目的外利用をした場合、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、またはその両方
- 不正受給した場合、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方
特に不正受給への罰則は厳しく、事業者名の公表や助成金の全額返還、5年間の支給停止なども、ペナルティとして受けなければなりません。受給には審査がありますが、自分でも受給条件と照らし合わせて申請内容を確認しましょう。もし間違いに気付いたときは、必ず自己申告してください。自己申告以外で不正が発覚すると上記の罰を受けることになります。
まとめ
自宅サロン開業は助成金や補助金の制度を利用することで、開業にかかる費用の負担を抑えることが可能です。助成金や補助金には多くの種類があり、その受給条件も様々です。受給要件を満たし、正しく利用しましょう。
自宅サロンはテナントと比べ少ない費用での開業ができます。比較的手軽に始められるのが魅力ですが、経営を軌道に乗せるのは難しいです。事業計画をしっかりと練り、かさみがちな初期費用を抑えて堅実な経営を心掛けましょう。